地方の障害者雇用では希望した仕事につけない。テレワークでつかんだキャリアの道のり

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プロフィール

和歌山県出身。幼いころからものづくりが好きでクリエイティブ職を志す。 情報系の専門学校を卒業後、Web制作を学ぶために大学に編入。 大学卒業後、アルバイト先の広告代理店に勤務するもうつ状態になり退職。 半年間の職業訓練を経て2023年7⽉よりはじまる合同会社に入社。 受注Webサイトに関わる構築・更新業務を担う。

目次

アルバイト経験のみ、第二新卒としての就活。働いていない劣等感と金銭的な不安が大きかった

これまでの経歴を教えてください

大学卒業後もアルバイト先の広告代理店での勤務を続けていました。ポートフォリオを見て誘ってもらい、Web制作や会社のサイト更新などの業務に約1年従事しました。ただ、看板制作も行う会社のため頻繁に大きな音が発生して、音に敏感な特性がある自分には環境面での相性が悪く「ここで長く勤務を続けるのは厳しいな」と思っていました。次第に体調を崩して退職し、第二新卒で再就職先を探すことになりました。

その1年後、現職のはじまる合同会社へ入社されたんですね

はい、現在は勤続期間10か月です。業務に慣れるまで最初の3か月は1日4時間の勤務でスタートしました。WEB関係の業務は少し経験がありましたし、代表が発達障害について知識・理解があり、私以外にも特性が強い方々が活躍している環境で安心感を得られたこともあり、比較的早く業務に慣れたと思います。

現在の働き方についても教えてください

自宅のある和歌山県から鹿児島県の会社にテレワークしています。まだ会社に行ったことは1度もないのですが、社員は全員テレワークなので疎外感は感じないです。現在は6時間勤務で基本的には10時から17時。残業はありません。

現在担当している業務を教えてください

鹿児島にあるEC支援事業を行う会社で、コーポレートサイト、LP、ECサイトなど多岐に渡る制作物の中で、私はWeb制作、Webサイト構築、コーディング業務を担当しています。

入社されてからの約1年は、どんな1年でしたか? 

公私共にすごく充実していました。私生活では、仕事に就けない間は「働いていない」という劣等感や金銭的な不安から友人と会っていても思いっきり楽しめない気持ちがありました。今は安定した収入があるので気軽に友達と遊びに行けるようになったり、趣味にも没頭できるようになって世界が広がっています。なによりも、やりたかった仕事に就けて毎日働くことが楽しいです。
以前は他者に何かをしてもらうばかりでお礼を言われることはあまりなかったですが、今は仕事を通して会社の役に立っていると感じられるし、「社会に属している」という安心感を得られるようになりました。テレワークによって障害を意識せずに働けていることも充実に繋がっているかもしれません。

第二新卒での再スタート。仕事は順調に進みましたか?

最初はとにかく緊張していて、社会人としてちゃんと仕事ができるのか不安でした。「ミスしたらクビになるかも!」と思っていて、常に職を失う恐怖心がありました。「客観的な評価が想像しにくい」ASDの特性による不安だったのかもしれませんが、アルバイトで多少経験があるとは言えこれまでに経験したことのない大きな権限を持たせてもらえることが怖かったです。
ある時「やらかした!!」と思い代表に報告したら「報告してくれてありがとうね」と言われて「あれ…?」みたいな(笑)。自分が想像していたよりも重く捉えられず、逆に安心させてもらえました。この経験から「ミスしても報告すればいいんだ」「クビにならないんだ」と思えるようになりました。こうした安心の積み重ねによって、業務のリスクや時間配分などの見通しが立てられるようになってきたし、以前より積極的に業務の提案ができるようになっています。リスクを伴う作業は代表に相談しながら進めていますが、相談ができる関係性を築いてもらえることは当たり前ではないと思うので、とてもありがたいです。

理解されない聴覚過敏と仕事選びの難しさ

現職はFLEMEEを通してのご入社ですが、元々障害者雇用で仕事を探していたのですか?

はい、自分の障害を隠すのもしんどいので最初から障害者雇用、もしくは障害オープンで理解が得られる会社を探していました。

「障害を隠すしんどさ」とはどういうものでしょうか?

「擬態している」みたいな感じです。見えない障害なので隠そうと思ったら短時間はバレないと思うけど、結構きついです。例えば多動。体が動いていることが自分にとっては自然体なのに「動かない自分」に擬態しないといけません。音も同じです。他の人が聞こえていない小さな音も常に聞こえているから疲れるし、大きめの音はより刺激も大きく感じて、驚かない、反応しない方が難しいです。

音に敏感な特性があるのですね、いわゆる聴覚過敏ですか?

はい、たまに「耳が良いんだね」と言われますが、そんな良いもんじゃないです。学生の時は聴覚過敏の影響もあり不登校になりました。隣のクラスのエアコンの音と校庭に入ってきた犬の鳴き声、(田舎なので)近所で何かしら焼いている音、全部が同じ音量で同時に入ってくるので、単なる騒音です。それにずっと曝され続けるので本当に疲れます。音で疲れてしまうので基本人混みにはいけない、公共交通機関が使えない。オフィスにいることができない。これは田舎でも都会でも同じです。例えば、スーパーでの買い物もしんどいです。至る所にスピーカーがあり、流れてくる音声に冷凍庫など設備の音も重なります。つまり外出が難しいですね。

想像を絶する負担感ですね、対処法はあるのですか?

防御一択ですね。代表的なもので言えばイヤーマフがありますが、結構重いので肩が凝ります。ただ、防御力は高いので大きな音が想定できる時や遠出する時には持っておくと安心感があります。あとは、安眠系耳栓やノイズキャンセリングのイヤホンなどぎりぎり声が聞こえて会話できるくらいの耳栓を普段使いしています。聴覚過敏のない方でも、通常より大きな音に触れるコンサートや映画館で着用している方がいると聞いたことがあります。

参考になります。過敏性は聴覚だけですか?

いえ、他にも視覚過敏があり、眩しいのが苦手です。蛍光灯や真っ白のノート(に反射した)光が辛く感じます。最近よく見かける眼鏡onサングラスをして対策します。他に触覚過敏もあって、スーツのような締め付けられる衣服は着れませんし、ストッキングも苦痛です。

そのような特性でもできる仕事を探すことは大変ですよね。今の会社は「障害を意識せずに働ける」とおっしゃっていましたが、具体的にどういう環境でしょうか?

仕事に影響する私の特性としては、音に過敏な特性と音声情報より視覚情報の方が理解しやすい特性(視覚優位)があります。これらの特性によって様々な音が発生する電車通勤やオフィスでは疲弊しやすく、業務に集中しにくくなります。また、口頭で多くの情報を含む指示をされても内容を理解する前に忘れてしまう、ということが起こります。前職のアルバイト先ではこういった自分の特性を感じるたびに「障害があること」を実感し、辛い気持ちになりました。でも、今の職場では自宅で勤務できるので多くの音に曝されて疲弊したり集中が欠けることは無いし、テキストベースの指示が多いので自分の得意な視覚情報で理解できたり、忘れても見返せばいいです。テレワークでは自分の特性を感じることなく業務が進むことを実感しました。

「FLEMEE」が運営するメディアFLEMEE-s 感覚過敏についての記事はこちら

地方には希望する仕事の求人がない。選考を受け尽くして感じた「どこからも必要とされていない」という絶望

現職に繋がるまでの転職活動は、かなりしんどかったようですね。

はい、将来への見通しがつかない日々はとにかく辛かったです。藁をも掴む思いで地域相談機関をはじめハローワーク、障害者支援センターや母校など頼れるところは全部相談に行き、紹介会社にも手あたり次第登録しました。職業訓練にも申し込んでやれることは全部やりました。その結果、そもそも和歌山県内に私の希望するWeb制作に関われる求人はほぼなく、数社あっても狭き門でした。多くの(Web関係職を希望する)人たちは大阪へ行くと知りました。でも私は特性や金銭的な事情で現状すぐに大阪には行けません。「現実的にテレワークしかないだろう」と思い、FLEMEEに登録しました。テレワークに特化したFLEMEEならテレワークでWeb系、IT系の求人があるだろうと期待していました。

でも、思うようには進まなかったのですか?

はい、希望していたWeb系の求人は経験者を求める求人が多くて、自分の経歴では要件を満たせなかったり、発達障害の特性を受け入れてくれる企業ばかりではなく、受けられる求人に限りがあることを再認識しました。当初はWeb関係の仕事を希望していましたが、次第に事務職の求人も受けるようになりました。「このまま仕事に就けないんじゃないか」という不安の方が大きくなって。生きるためには何かしらの職に就かないとだめだと思い、手あたり次第に応募するようになりました。環境や内容が「特性的に厳しいだろうな」と思っても受けていました。今思うと向いていない仕事も多かったですが「何でもできます!」って言っていました。

それだけ、焦っていたということですね

本当にたくさんの選考を受けて、お見送りになっていたので、ずっと否定され続けている感覚になりました。どこからも求められていないと絶望感すらありました。

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テレワークで叶えた「理想の会社」との出会い

はじまる合同会社を紹介された時はどんなお気持ちでしたか?

希望している業務内容だったのでとても嬉しかったです。でも、不採用になるだろう、とも思っていたため、期待はあまり持たず選考に挑んでいました。当時はそれくらい打ちのめされていた時期でした。

不安とは裏腹に選考は順調に進みましたね。入社を決めた理由を教えてください

代表と面接をして「この人の元で働きたい」と思ったからです。物理的にもここしかない!というのはありましたが、面接の中で代表が「ASD」という単語を知っていることに驚き、安心しました。まだ一般的には理解が進んでいない障害だと理解しているからこそ、「障害について理解が得られるかもしれない」と思えたのは大きかったです。

その期待は現実となりましたね。約1年働いてみて、今後のキャリアへ考えの変化はありましたか?

以前は専門スキルを磨いてスペシャリストになりたいと考えていましたが、今はどちらかと言うと社内でマルチに活躍したいと思うようになっています。今の会社でどうやって成果を出すか、どうやって他者の役に立てるかをよく考えるようになりました。会社が好きだからこの会社で活躍したいという思いが強くなったんです。もうすぐ雇用形態が契約社員になるので、社会的にも少し安定して嬉しいです。

素敵なご縁に繋がりましたね。転職活動を振り返って今思うことは?

ASDの私には見通しの立たないことに対する不安や白黒思考になる特性があり、応募しても手ごたえがなく「どうしたら良いのか想定できない」ことが多い転職活動は辛く厳しいことが多かったです。ただ、その中でも協力してくれる支援者や励ましてくれる友人の存在には助けられました。自分一人ではこのような結果にはなっていなかったと思います。白黒思考でネガティブに考えがちでしたが、今回「なんとかなった」経験ができて、今後の白黒思考に対しても多少捉え方が変わるんじゃないかとも思えます。転職に成功したから言えることですが、良い経験にはなりました。

最後に、転職活動をしていた頃の自分に伝えたいことがあれば教えてください

「何回も不採用になって絶望しているかもしれないけど、最終的には自分の望む会社にご縁があるから。あまり思いつめずにそのまま頑張ってね」と伝えてあげたいです。

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