企業事例集

あああああ

IT人材・精神発達障害の方を障害者雇用で採用し、「誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」に貢献。

株式会社SmartHR

アクセシビリティ本部ディレクター   
桝田 草一
人事統括本部ダイバースOpsユニットチーフ   
新名 咲

課題

  • プロダクトのアクセシビリティ向上を図りたかった
  • 自分たちが開発するプロダクトが従来の障害者雇用の仕事を奪っているのでは、という課題意識があった。
  • 障害者雇用において、仕事を用意する、という課題の難しさを感じていた。

解決法

  • 障害者だからこそできる仕事(障害特性があるユーザーのプロダクトの使い勝手のテスト)を作ることで、プロダクトのアクセシビリティ向上と障害者雇用の2つの問題を同時に解決できるのでは、と発案
  • まずはWebの利用に多くの困難を抱える視覚や肢体不自由の身体障害者の採用を検討

結果

  • 様々な身体障害をお持ちの方を短期間で3名採用。
  • 開発チームが障害を持つ方々と共に仕事を進めることで、プロダクトのアクセシビリティに対する意識の向上。

今回インタビューを行ったのは人事労務領域の業務を効率化するプロダクトを開発し提供している株式会社SmartHR。2013年に創業し、2024年2月時点で社員数が1075名まで増えた急成長しているIT系のベンチャー企業です。プロダクト開発のミッションに必要であるからと、異例の開発側主導で障害者雇用に着手。同社の障害者雇用に対するスタンスやユニークな取り組みを取材することができました。

【自己紹介】
アクセシビリティ本部ディレクター 桝田 草一氏
私はアクセシビリティ本部のディレクターの桝田です。アクセシビリティ本部のマネジメントをしています。アクセシビリティスペシャリストとも名乗っています。アクセシビリティ本部は、SmartHRのコーポレートミッションである「誰もがその人らしく働く」という理念の「誰もが」を実現するための部門です。具体的には、プロダクトのアクセシビリティ向上や多言語対応を行い、障害の有無や使用する言語に関係なく、誰もがSmartHRを利用できるようにすることが大きなミッションです。

人事統括本部ダイバースOpsユニットチーフ 新名 咲氏
私は人事統括本部ダイバースOpsユニットチーフの新名です。障害者雇用担当として昨年の10月に入社し、ダイバースOpsユニットを立ち上げました。それまでは、障害者雇用のための社内体制が整っていなかったため、サテライトオフィスを活用していました。しかし、障害のある方とも同じ環境で働ける職場を作ることを目指して、この部署を立ち上げました。業務内容は、採用、業務内容の調整や作成、障害があるメンバーのサポートまで、一貫して担当しています。

ITポジションで障害者雇用をするメリット

ー 障害者雇用をアクセシビリティテスターポジションで採用しようと思った背景や経緯について教えてください。

桝田:SmartHRでは、以前から障害者雇用を行い、切り出し業務をお願いしていましたが、やりがいを感じてもらうことが難しいという課題がありました。全社会議で「定型的な業務を障害がある方に任せたい」という提案がありましたが、SmartHR人事労務研究所の副島さんが「SmartHRは障害者が従来担ってきた業務を奪っているソフトウェアであり、誰もがやりがいで仕事ができるわけではないから、あえて業務を作り出す必要がある」と話したことがきっかけで、アクセシビリティテスターというポジションを考えるようになりました。
他社との障害者雇用の情報交換会でも、業務の作り方ややりがいの提供に悩んでいることを知りました。
前職では、視覚障害者がマッサージなどの福利厚生を提供するヘルスキーパーという部署があり、彼らにプロダクトのテストを依頼したことがありました。その経験から、障害者が自らの視点でプロダクトをテストし、使いにくい部分を報告することで、アクセシビリティを向上させるアイデアが浮かびました。
このアイデアを企画書にまとめ、人事労務担当者に見せたところ、スムーズに進みました。これが現在のアクセシビリティテスターポジションの採用がスタートした経緯です。

ー アクセシビリティ本部では、これまでどういった方を採用して、どういうお仕事をお任せしてこられたのでしょうか。

桝田:まずアクセシビリティ関連の業務経験があり、IT系の知識を持つ方を採用しました。その方には、既存の社員とともにアクセシビリティのテスト業務を担当していただきました。具体的には、テスト計画を立てる役割を担っていただきました。
次に、手先がうまく動かせないため、マウスやスマートフォンの操作に時間がかかる方を採用し、プロダクトの使用に問題がないかをテストしてもらいました。また、弱視の方も採用し、視力に頼らずにプロダクトが利用できるかを確認するために、スクリーンリーダーを使用してテストを行ってもらいました。

ー アクセシビリティテスターとして採用された方々が、どのようにプロダクトや組織に影響を与えていますか?

桝田:定量的な結果はまだ出ていませんが、定性的には大きな変化がありました。開発チームが障害がある方と共に仕事を進めることで、アクセシビリティへの意識が向上しました。新しいプロダクトを開発する際に、視覚障害がある人が使いやすいかどうかを考えて実装するようになりました。また、障害者雇用週間に合わせたマーケティングのメッセージについても、当事者からのフィードバックを得ることで、より適切な内容にすることができました。

ー アクセシビリティテスターとしてのキャリアパスについて教えてください。

桝田:アクセシビリティテスターとしてキャリアをスタートし、その後、アクセシビリティエンジニアやスペシャリストにステップアップすることが可能です。あるいは、テスターとして、テスト計画の作成や複数のテスターのマネジメントを行うキャリアを積むこともできます。また、アクセシビリティの技術や経験がない方でも、テストを通じてスキルを学び、スペシャリストになることができる環境を提供しています。

ー オリィ研究所・加藤の貴社に対する支援はどうでしたか?

桝田:視覚に障害がある方を採用したいというとき、加藤さんは全盲から弱視の方まで幅広く紹介していただきました。それぞれの特性についても詳しく説明していただき、非常に助かりました。自社応募の場合、健常者の方も多く応募してくるため、特定の特性を持つ方を探すのは難しいですが、加藤さんのようなエージェントを通じて「こういう人が欲しい」と明確に伝えることで、効率的な採用が可能になりました。加藤さんは理学療法士の経験があり、細かい障害の話も理解してディスカッションや提案ができる点が非常に助かりました。

障害者雇用は法定雇用率達成の為ではなく、プロダクトの価値を高めるために行う。

ー 桝田さんの採用において大事にされていることは、法定雇用率達成ではなく、別のところにポイントがあるかと思いますが、それは何でしょうか。

桝田:アクセシビリティ本部のミッションはプロダクトを良くすることです。そのため、法定雇用率の達成が目的ではありません。プロダクトの改善に寄与できる特性を持った方を採用することを重視しています。たとえ週所定労働時間が20時間未満* であっても、その方がプロダクトの改善に寄与できるのであれば採用します。実際に20時間未満で働いている方もいます。もちろん障害者雇用率に寄与できれば理想的ですが、プライオリティはまずプロダクトの質を向上させることです。この考え方が他の企業とは異なる点かもしれません。

* 基本的には、障害者雇用としてカウントされるためには週所定労働時間が20時間以上である必要があります。

ー そのような採用方針に対して、現場や経営からの反対はありませんでしたか?

桝田:私のミッションはアクセシビリティを向上させてプロダクトの価値を高めることです。そのために必要な組織や人材を確保するという説明を行いました。もし「法定雇用率を満たすために障害者を雇用します」と言っていたら反対があったかもしれませんが、プロダクトの向上を目的として採用を進めたため、説明責任を果たせたのだと思います。

ー なぜそのような考え方ができたのでしょうか?

桝田:弊社には辻さんという視覚障害を持った方がいて、彼から「法定雇用率を満たすために雇用されているが、実際には毎日オフィスに出社しているだけで仕事がない」という話を聞いていました。これは、会社によっては理不尽であり、望ましい姿ではないと感じていました。
障害者雇用において、法定雇用率に寄与しないと雇用されないというのは非合理的だと感じています。例えば、障害があるために働く時間が短い人が仕事を得られないのは理不尽だと思います。
当社の以前のコーポレートミッションが「社会の非合理をハックする」というものでした。私はずっと、非合理的な構造に自分が乗っかることで、その構造を増長してしまうんじゃないかと考えていました。その構造に乗った方が合理的なのは間違いないんですけど、結局、みんなが一時の合理性でその構造に従った行動をとるから、それがより合理的になっていくということがあります。
ある意味、自分たちはそこを外れて、そうじゃなくてプロジェクトのためにこうやるんだという事例ができればいいと考えています。もちろん、そこから社会が大きく変わっていくことなんて考えていませんが、そういう感覚ではありました。社会に反発するわけではないですが、合理的だからといってそっちに判断を寄せないというのを、今でもある程度思っています。

ー 桝田さんが思う、障害者雇用の大事なポイントは何でしょうか?

桝田:SmartHRのアクセシビリティ本部において、重要なポイントは「障害を持っているからこそ活躍できる」という考え方です。中途障害を負った方などは、これまでのスキルが活かせなかったり、障害そのものがネガティブに捉えられたりすることが多いですが、障害を持っているからこそできる仕事や活躍できる場面があると信じています。アクセシビリティ本部では、障害を持っているからこそできる業務を積極的に取り入れています。このアプローチによって、障害者の定着率やパフォーマンスが大きく向上すると考えています。この面白さや価値を、できるだけ多くの人に広めていきたいと考えています。

今後は精神発達障害の方を積極的に採用していく。地方人材のテレワーク勤務も検討していく。

ー ダイバーOpsユニットでは、どういう方を採用されていらっしゃるのでしょうか?

新名:私の部署であるダイバーOpsユニットでは、主に精神障害や発達障害の方々をターゲットに採用しています。アクセシビリティテスターの採用も行っていますが、ダイバーOpsユニットでは特に精神障害や発達障害の方々に重点を置いています。
理由としては、採用計画が非常に多くの人数を必要としているため、既存の障害者雇用のあり方ではマッチしづらい障害種別の方々を積極的に採用することで、この計画を達成しようと考えました。精神障害や発達障害の方々は、まだまだ企業から避けられがちな存在です。しかし、私はこれが偏見によるものであり、実際には彼らのスキルが低いわけではないと考えています。
弊社はリモートワークやフレックス制度を活用しており、働き方の自由度が高いため、精神障害や発達障害の方々にも適した環境だと思っています。これらの方々が安心して働けるような環境を整え、採用を進めています。

ー 精神発達障害の方の採用に苦手意識や抵抗感がまだまだある企業様が多いかと思いますが、その背景にあるものは何だと思いますでしょうか?

新名:単純に事例がまだ少なく、歴史が浅いという部分が大きいと思います。知的障害の方々に関しては、特例子会社などで多くの事例がありますし、身体障害の方々はもっと昔から企業で雇用されてきた実績があります。しかし、精神発達障害の方々についてはそのような実績が少ないです。
また、精神発達障害は見えづらい障害であるため、理解が難しいという点も背景にあると思います。例えば、視覚障害であれば「目が見えないんだろうな」と想像がつきやすいですが、精神発達障害はその特性が外からは見えづらいため、どのように対応すればいいのか分かりにくいのです。

ー そういった背景の中、どのようなことに注意して精神発達障害の方を採用や支援していくべきなのでしょうか?

新名:精神発達障害の方を採用・支援する際には、見えづらい特性を理解することが重要です。企業側が「何に配慮したらいいか分からない」「関わるのが怖い」といった感情を持つことが多いのですが、これは誤解や偏見から生まれることが多いです。
具体的な対策として、まずは障害特性についての教育や情報提供を行うことが重要です。しかし、最も効果的なのは、実際に当事者の方と関わる機会を作ることです。例えば、社内の研修やイベントに障害のあるメンバーが登壇したり、参加したりすることで、実際のコミュニケーションを通じて理解を深めることができます。
また、当事者と直接関わることで、誤解や偏見が解消され、企業側の理解が深まると考えています。これにより、精神発達障害の方々が働きやすい環境を作ることができると信じています。

ー ダイバースOpsユニットの仕事内容や選考内容について教えてください。

新名:ダイバースOpsユニットでは、主にPC事務の仕事が多いです。比較的自立性の高い方々を採用し、メンバー間で調整しながら仕事を進めています。採用関連の業務が多く、面接の日程調整や候補者のスカウトなどを担当しています。正社員だけでは手が回らない部分をサポートしています。
ダイバースOpsユニットの採用選考では、必ず2日間の実習を行っています。初日は出社して、2日目はリモートで作業を行います。これにより、私たちも一緒に働けるかを確認できますし、障害のある方々もこの会社が自分に合っているかを確認できます。実習を経て入社いただくことで、入社後のギャップが少なく、立ち上がりも早く、モチベーションを保ちやすいです。

ー 現在の障害者雇用の課題や今後の方針について教えてください。

新名:弊社は他の障害者雇用を行っている会社に比べると規模が小さいです。もっとアピールしていく必要があると感じています。現在は週に1回の出社をお願いしていますが、今後はフルリモートの求人を出したいと考えています。地方には働ける障害のある方が多くいるため、フルリモートの求人を出すことを本格的に検討しています。障害のあるメンバーが全国の障害者求人情報をリスト化し、分析を行っています。
今後採用したい方については、まず弊社リモートやフレックスなど働き方に自由度があるため、自己管理ができる人を求めています。また、困ったことや分からないことがあった場合、自分から発信できる力も重要です。自己管理能力とコミュニケーション能力を特に重視しています。実習の際にも、これらのスキルを重点的に見ています。

ー 選考で見極めているポイントはありますか?

新名:オフィス実習の1日目に仕事内容を説明した後、あえてその場を離れます。その際に「何か困ったらSlackで質問してください」という時間を設けています。これにより、2日目のリモート実習に向けて1日目に練習ができます。質問ができなければ、その場でフィードバックを行い、2日目に臨んでもらいます。この時間を作ることで、候補者の自己管理能力とコミュニケーション能力を見極めています。

ー 今の御社で働く魅力とは何でしょうか?

新名:一番の魅力は、一緒にチームを作り上げていけることです。弊社は変化が多く、仕事の仕方や内容、使用するツールなどが頻繁に変わります。会社説明会でもその点をお伝えしており、やりづらさや課題点があれば、積極的に改善していける環境です。安定した支援を受けられる会社ではないかもしれませんが、皆で話し合ってより良いチームを作り上げていくには最適な環境です。
私のミッションとしては、法定雇用率を達成することが非常に重要です。しかし、雇用率が優先されると、人が駒のように扱われ、実際には仕事をしなくてもいいという状況が生まれてしまうことがあります。私は、働くことによって得られる達成感や人との繋がり、感謝される喜びを大切にしています。法定雇用率の達成を目指しつつ、まずは働く環境を整え、自分の役割を果たし、期待される仕事をこなすことができる環境を作りたいと思っています。

担当者から一言

桝田様

「特にデジタルプロダクトを開発している企業の方々へお伝えしたいのは、アクセシビリティテストを取り入れることが非常に有効だということです。アクセシビリティテストは、障害者雇用を進める上で非常に良い仕組みであり、ぜひ広めていきたいと思っています。
もちろん、テスト計画を立てることなどいくつか難しい点もありますが、その部分については私たちが全面的にサポートします。質問や疑問があれば、何でもお答えしますし、必要であれば手伝うこともできます。ですので、ぜひ真似してみてください。
人事担当者の方や同じようなポジションの方々も、この取り組みに興味を持っていただければと思います。プロダクト側と人事側の両方が同じ思いで取り組むことが必要ですが、それが揃えば非常に効果的な取り組みになります。
我々だけでは多くの障害者の方を雇用することは難しいですが、他の企業にもこの取り組みを広めることで、やりがいを持って働く障害者の方々が増えると信じています。ぜひ、一緒に障害者雇用を進めていきましょう。 」

新名様

「一緒にチームを作っていく環境は整っています。既存のメンバーは他人の話をしっかり聞く姿勢が強く、一緒に改善に向けて話し合うことができるチームです。この点については期待していただいて良いと思います。
また、障害のあるメンバーには、障害当事者として働いていることを積極的に発信してほしいと思っています。現在のメンバーの多くもそのような活動に意欲的です。
例えば、インタビューに参加したり、自分たちでポッドキャストを企画・制作したりすることで、他の障害のある方々が働きやすい社会を作っていくことができます。現メンバーも「自分が発信することで多くの人が働きやすくなる」と感じており、そのような仕事に意欲を持っています。
このような活動に興味がある方に、ぜひご入社いただきたいと思います。」

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